放生会は9月に行われる福岡の祭り。福岡の三大祭りの一つに数えられるほどの賑わいを見せます。
福岡では、9月だというのに、放生会までは浴衣でOKというローカルルールがあります。しかし、実は、これは本当は違うのです。
放生会で着る着物は本当は何なのでしょうか?また、博多では「梨も柿も放生会」という言葉がありますが、この意味は何なのかをまとめました。
放生会までは浴衣もOKは嘘?
博多のローカルルールとして放生会までは浴衣を着ても大丈夫ということが定着しています。
しかし、本来は9月といえば暦の上では秋です。
浴衣は夏に着るものなので、9月の放生会では単衣の着物を着ないといけないはずなのです。
でも、まだ残暑も厳しく、放生会を境に衣替えをするので浴衣の着納めということで、博多では許されている、という説が有力となっていますが、実は、これは全く違う伝統があるのです。
昔は放生会の楽しみの一つに「幕出」という行事がありました。
町内や大きな商店などで幕を張り、ご馳走をふるまう、というものです。
この時に、男たちは飲み食いして騒ぎ、女たちは着飾って楽しむというのが庶民の楽しみだったのです。
女たちがこの時期に着る着物のことを「放生会ぎもん」(放生会の着物という意味)と呼ばれ、着物を一斉に新調するのです。
博多の男たちにとっては、「放生会ぎもん」を奥さんや子供たちに買ってやることができないのは最大の恥とされていて、福岡市内の呉服のほとんどが売れてしまうくらいの勢いだったとのことなのです。
女性にとっては新しい着物を買ってもらう最大のチャンスだったのです。
普段は、なかなか着飾って女性が外を出歩くことができない時代です。
新調した晴れ着を2回も3回も着替えて浮かれて遊ぶのが放生会での女性の楽しみだったのです。
ちょうど衣替えの季節であるということもあって、新しく着物をあつらえるという風習になったと思われます。
いつのころからか、この放生会ぎもんの風習の「衣替え」の部分だけが残り、放生会までは浴衣で大丈夫、というように変化してきたものだと思われます。
花火大会や夏祭りは暑かったり、日程が合わなくて着ることができなかった浴衣を、放生会の7日間のであれば、自分の時間がある時に着て出かけられる、という浴衣の着納め、として今では浴衣を楽しむ祭りに変化しているようですね。
着物、といっても、現代は決まりごとがかなり緩和されて、季節季節の節目で単衣とか袷とか着わけていたものも、暑い時なのか寒い時なのか?ということで境目がずいぶんあいまいになってきていますから、昔ほどこだわる必要もない、ということですね。
9月とはいえ、まだまだ残暑残る時期。
単衣はとても暑いと思われますので、最近のルールの浴衣でOKというのにも納得が行きますね。
梨も柿も放生会(ほうじょうや)の意味とは
なしや、なしや
博多の言葉で「どうして?なぜ?」という意味で相手を問い詰める時などに使うことが多い言葉です
子供の喧嘩などで「なしや?なしや?」と問い詰められた時に
「なーしもかーきも放生会(ほうじょうや)」
といって茶化して逃げていたところから、「梨も柿も放生会(ほうじょうや)」という言葉が残ったのです。
博多は芸どころ、博多にわかの要素は子供のころから培われている、といったところなのでしょう。
なかなか面白い言葉遊びですよね。
浴衣の着納だったり、この時から梨やカキがおいしくなってくる時期だったり、福岡の祭りには季節の変わり目という概念が根強く残っているところが魅力的ですね。
新ショウガも忘れずに
特に放生会の祭りの意味とは関係がないのですが、放生会に来た博多の人人たちは、お土産に新ショウガを買って帰ることが多かったそうです。
そのころの名残りなのか、放生会の出店には新ショウガを売っているお店が目立ちます。
まだ葉や茎が付いたままの新ショウガ、その新ショウガを見ると博多にも秋が来たんだな~と思わずにはいられないしみじみとした気持ちになります。